日本茶の可能性を追求する茶葉屋【GEN GEN AN 幻】
その周囲に集うさまざまなジャンルのプロフェッショナルとの茶実験談義「NEW TEA LAB」。第七回目は、日本茶の価値観を広げ、新しい愉しみ方を提案し続ける南青山の日本茶専門店「櫻井焙茶研究所」の櫻井真也さんとの対談です。コロナ禍で始まった配信企画「NEW TEA TIMES 茶の閒」や、両者のコラボレーションによって生まれたオリジナルブレンド「コメット」と「ブラックホール」について。
ブレンドという名の相互理解
「季節のブレンドを24節気を通じて提案していく」それが、櫻井焙茶研究所としての基本姿勢だと櫻井さんは言う。「オリジナルブレンドをつくるときは自分の気持ちも入るので、誰かと新たな取り組みをするときは、相手を深く知り、自分のことも正しく知ってもらい、お互いに理解をした上でつくり始めます。相手がどういう人かを知らないとつくれないし、自分のこともよく知ってもらわないとつくりづらいですね」(櫻井さん)
GEN GEN AN幻と櫻井焙茶研究所のコラボレーションで生まれたお茶は、お互いの相互理解の上で創り出された。今回、オリジナルブレンドのテーマとして最初に丸若が提示したのが茶の名前にもなった、「コメット」と「ブラックホール」だ。
「『コメット』も『ブラックホール』もこれまでの人生であまり考えたことがなかったです。言葉自体、ひさしぶりに聞きました(笑)おお、そうきたか、と。一方で丸若さんらしいな、とも感じました。銀座ソニーパークの店舗を見ていたので、『宇宙のお茶』というのは意外ではなかったですが、やはり人とは違うな、と。丸若さんらしいオーダーで、大枠のイメージから入られるんだな、と思いましたね。」(櫻井さん)
なんの前触れもなくそのオーダーを突きつけられてもきっと作れなかっただろうと語る櫻井さん。コロナ禍で始め、開始から1年継続しているインスタグラムでのライブ配信企画「NEW TEA TIMES 茶の閒」の取り組みがあってこそ、そこでの相互理解があってこそ実現したコラボレーションだったという。
「まずはEN TEAの茶葉を知らなければいけない。すべて試飲するところから始めました。ファーストサンプルはシンプルに3〜4種類のブレンドに。そのときはまだ“櫻井焙茶研究所的な考え方”が残っていました。「茶の閒」で話したり、銀座ソニーパークのGEN GEN AN幻 銀座店に行ったり、そこで宇宙人のロゴを見たり、サカナクションの曲を聞いたりして、徐々に自分の頭をアップデートしていった。その結果生まれたのが今回の「コメット」と「ブラックホール」です。結果としていろいろな茶葉を使ったブレンドになりました。難しかったけど、楽しかったですね」(櫻井さん)
互いに理解を深め合い、解釈をし、寄り添いながら作り出す。真摯な姿勢がそこにある。
陰陽両極の“宇宙茶”
今回生まれた「コメット」と「ブラックホール」。どちらも一度聞いたら忘れられないネーミングだ。そして、互いに全く異なる「物語的」な味わいがあるという。「『コメット』は、香りから口の中に入って後味まで、味わいの変化が激しいお茶です。宇宙旅行をしている気分。地球を抜け出し、オゾンホールを突破して、見たことのない世界を旅している気分になれるお茶ですね。大草原で、お花が綺麗なところで、ふわふわ飛んでいってしまいそうなシチュエーションで飲んでほしいです。」(櫻井さん)「その名の通り、彗星が宇宙空間を飛行し、尾をつけるように優しさが余韻を残して去っていく感じがします。」(丸若)
「『ブラックホール』は考えさせる味わいです。まさに夜に合うお茶。ひとりで物思いに耽るときって焙煎の効いたお茶が合うんですよね。夜寝る前に飲んだらそのまま闇の中へすーっと引き込まれていく感じですね。」(櫻井さん)「見た目も含めて、味わいも、不安定さを持っている。その不安定さが『ブラックホール』という名前ととてもフィットしている。吸い込まれそうになりますね。」(丸若)
「『コメット』と『ブラックホール』は言うなれば『陽』と『陰』、『太陽』と『月』、そんなイメージを持っています」と櫻井さんはいう。単なる「お茶」としての美味しさだけでなく、ストーリーを感じさせる味わい。「嗜好品」としてのお茶は、さまざまな表情を見せる。
NEW TEA TIMES 茶の閒
昨年から開始したインスタグラムのライブ配信企画「NEW TEA TIMES 茶の閒」。櫻井さん、丸若、そして、福岡市にある茶酒房「万 Yorozu」 の徳淵卓さんの三者が中心となり取り組んでいるこの企画。「始めたときは、1年も続くとは思っていなかった」(丸若)という配信だが、結果的にこの取り組みは双方にとって意義深いものになっているという。「1年あっという間でしたが、お茶好きの人も、三者の店のお客様も含めて、見てくださっている人びとが、お茶の愉しみ方にはいろんな形があるということに気づくきっかけにはなっているのかな、と思います。決して大々的な取り組みでなくマニアックですが、配信を楽しみにしてくれている人もいる。コロナがなかったらやっていない。それぞれがこの状況に置かれたときに『お茶のために何かやらなきゃ』と同じタイミングで考えて一緒に始められたということが大切だと思っています」(櫻井さん)
「櫻井さんがいらっしゃるから今の自分があるんです。櫻井さんご自身や、櫻井焙茶研究所の良さを知れば知るほど、自分は何をすべきなのか、何がしたいのかが明確になった。そこから今の自分たちのスタイルが形づくられている。自分の役どころをきちんと理解できたんです。ライブ配信にしろ、今回のコラボレーションしたお茶にしろ、取り組みを経る度に、だからお茶っておもしろいんだ、と改めて感じています」(丸若)
ともに目指すは、茶の愉しみの進化と発展。
「NEW TEA TIMES 茶の閒」やオリジナルブレンドの開発など、互いを理解し、関わり合い、交わりながらも異なる独自の軸を持って展開している両者。今後はどのような拡がりをつくっていくのだろう。「お茶を通じて集まって、(徳淵さんを含め)三者三様のお茶の愉しみ方の提案をしている。それを引き続き発信しながらやっていくことだと思います。お茶業界全体にとっても良いことだし、お茶を知るきっかけにもなる。お茶って身近にあるものなんだよ、ということに気づいてもらえればと思っています。そしてさらに付け加えるならば、お茶ってこんなに表情豊かなんだよ、と知ってもらうことが、誰かひとりでなく、三者でやる意味なのかな、と。それぞれがそれぞれのやり方で、茶の発展を目指している。大きな目標が共通していることが何より大切ですね」(櫻井さん)
櫻井焙茶研究所とGEN GEN AN幻。日本茶の愉しみをより多くの人に広げていく方法を探る中で、今回作り上げたオリジナルブレンド以外にも取り組みが始まっている。開店以来一貫して茶葉販売に拘ってきた櫻井焙茶研究所でのティーバッグ販売だ。GEN GEN AN幻の母体であるEN TEAは、創業以来ずっと生分解性素材にこだわり、パッケージのアップデートを続けている。植物のデンプンを原料としたバイオマス素材「ソイロン」製のティーバッグを用い、外装にも特注のクラフトパックの素材を利用する。茶の未来を見据える中で、社会の未来も見据える、そんな至極当然の取り組みではあるが、その姿勢への共鳴によって、櫻井焙茶研究所初のティーバッグ商品『TEA BAG』シリーズは生まれた。仕上げる工程からはみ出てしまう茶葉や食材を残さず使用するという『循環』をコンセプトにした茶の形。『TEA BAG』だからできること、を考え抜いて生まれた新たなプロダクトだ。
今、誰も予想だにしなかったことが起こるこの世界で、宇宙を旅する茶をつくり出し、社会のあるべき姿を考え、お茶の未来を切り拓いていく。「茶」をめぐる旅には、まだまだこれから楽しいことが起こりそうだ。
Edit & Text:Kana Takeyama(PARK 365)
■ 先行販売開始日
2021年5月2日(日)
■ 販売店舗
GEN GEN AN幻 オンラインストア https://gengenanginza.stores.jp
※ GEN GEN AN幻 渋谷店舗、Ginza Sony Park 店舗につきまして、緊急事態宣言にともない5月1日から5月11日まで休業中の為、営業再開にあわせてコメット、ブラックホールの販売を開始いたします。
※ 営業の再開に関してはInstagramアカウントをご確認ください。
■商品詳細
「コメット」
彗星が宇宙空間を飛行し、尾をつけるように優しさが余韻を残して去っていくような風景が広がる爽やかなブレンド。香りから口の中に入って後味まで味わいが変化するお茶。
お茶と、檸檬、月桃の葉、枇杷の葉、レモングラス、ラベンダーを使用。
味:爽やかな甘さと渋み。
香り:釡炒り茶の青さと花の香り。徐々に変化して浮遊感の感じられる香り。
ティーバッグ 7個入:1,296円
「ブラックホール」
夜寝る前に飲むと、そのまま闇の中へすーっと引き込まれていくような深い味わいのブレンド。ひとりで物思いに耽るときにぴったりの夜に合うお茶。
お茶と、蜜柑、生姜、ローズレットペタルを使用。
味:落ち着いた甘みと、微かな刺激。
香り:深い香ばしさと華やかな香り。引き込まれるような奥行きのある香り。
ティーバッグ 7個入:1,296円
※ 製品の製造、ブレンドはEN TEAで行っています。
※ ティーバッグは植物のデンプンを原料としたバイオマス素材「ソイロン」を使用しています。